情報量理論とは、辻谷真一郎氏が編み出した翻訳理論です。もともとは、@講座をやっていて、日本語になりきっていない訳文が多く、A正確に訳しても、クライアントに評価してもらえず、Bどのような基準によって翻訳というものを考えてよいのかわからないという問題を解決するために導き出したものです。
なぜ、このような考え方が必要なのでしょうか。
品詞、構造のみから訳文を導くと、あるところで限界につきあたります。今までは、理論だけで解決できないと、普通の人にはつかみにくい翻訳の技術なるものがもちだされ、解決されてきました。しかし、理論を実用化するのが技術というものであり、理論だけではうまくいかないので、技術をもちだすというのはおかしいはずです。
たとえば、immune injuryもimmune deficiencyも形容詞+名詞です。ところが、immune deficiencyは「免疫不全」であり、immune injuryは「免疫傷害」ではなく、「免疫性の傷害」です。Injuryはdeficiencyに比べて、情報量が大きく、具体的に把握することができ、あくまでもこちらが主役になります。Deficiencyは何かはっきりせず、漠然としているため、”immune”に主役の座をのっとられ、「免疫不全」(免疫がうまくいっていない状態)となります。
日本語にも同じ現象がみられ、たとえば「夜の街」の主役は「街」であるが、「橋のたもと」の主役は「橋」です。このような現象を情報量理論では、形容詞による名詞ののっとり現象といいます。
このような句を訳すには、構造、品詞のみに頼っていては限界があり、情報量を考えなければ訳語を導くことができません。
「翻訳理論」を身につけていれば、翻訳会社やクライアントからクレームを受けても、理論に基づいて反論することができます。そこで、辻谷氏はこれまでに、翻訳理論について次の2冊を書き下ろしました。
「翻訳入門 翻訳家になるための考え方と実践」
本体価格1800円+税 222ページ B6判 ノヴァ刊
「翻訳の原点 プロとしての読み方、伝え方」
本体価格1800円+税 239ページ B6判 ノヴァ刊
| 「翻訳入門 翻訳家になるための考え方と実践」より |
「私がこの本を書いたのはもちろん、これから翻訳の勉強を始めようとする 人に、これまでとはちがうまったく新しいものの見方を提供するためです。こ とばからことばを導くのではなく、必ずいったん対応する現実というものを想 像し、今度はその想像したものを日本語で表現する習慣を身につけてもらうた めです。そのため、わずか数語にすぎない文、いや、文とも言えないようなも のを扱う段階から、そのことにこだわってきました。
そうして、翻訳に取り組むときの新しい考え方、新しい姿勢を身につけた 方々には、プロ野球やサッカーリーグに相当する既存の世界でのしあがってい
くよりは、翻訳の世界に新たな価値を付け加える翻訳者になっていただきたい
という思いをもっております。」
| 「翻訳の原点 プロとしての読み方、伝え方」より |
「翻訳とは、外国語の理屈で書かれた内容を日本語の理屈で再構成することにほかならない。人はいつも、とりあえず易きにつきたがる。だが、大切なことは、その道がゴールに続いているかどうかである。
山に登るには二通りの道しかない。麓から頂上までずっと同じ傾斜で続いているような都合のいい道を期待してはならない。最初ゆるやかで頂上に近づくに従って険しくなる道か、初めは険しくても、あるところまで来ればすっと視界が開けてくる道か、二つに一つしかない。
易きにつかず、まずは翻訳というものの本質を見ることから始めよう。一見遠回りに見えても、本当はそれがいちばんの近道なのである」
「翻訳の基本は情報量の大きさを考えること」
(2007年3月31日更新)
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